リジェネラティブ・オーガニック・カンファレンス2023の記録、1/4

環境

パタゴニアが主催する「リジェネラティブ・オーガニック カンファレンス」に参加しました。

いわゆる環境再生型有機農業に関する、日本初の会議です。

このような会議がwebで開催され、youtube(事前登録者のみ)で地理と時間に関係なく参加・視聴できる。

これはコロナによって引き起こされた社会進化の正の側面だと思います。

特に日本人の演者による4つの講演が素晴らしかったので、備忘録としてまとめておきたいと思います。

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「地球と食料の未来のためにフードシステムと日本にできること」

演者:国際農林水産業研究センター 飯山みゆき氏

https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/jipfa/uurjcd000000ewbh-att/20200728_01_panelist_01.pdf

食料供給の仕組み(フードシステム)と歴史、世界の農業の現状と課題についての講演です。

講演の中で何気なく発された言葉に、衝撃を受けた一言がありました。

それは

「人口は、その時代に供給される食料によって規定される」ということ。

飽食の世界に生き、こんな当たり前のことまで忘れてしまっている自分が恐ろしくなりました。

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1900年代初旬まで、フードシステムにおける社会的要請は「飢餓の撲滅」であった。

「緑の革命」と呼ばれる化学肥料の人口合成灌漑(水やり)インフラの整備肥料過多でも倒伏しない品種の開発によって食糧生産は飛躍的に上昇。

人口量を上回るスピードで食糧生産の増加が実現され、世界人口は1900年から2020年で4倍に増加。

オイルパームなど油を取るための作物生産に関しては生産面積が8倍に、採算量はなんと31倍に。

大量で安価に供給される油は加工食品の発達へとつながり、今日の食生活にも大きな影響を与えている。


また、私たちが口にするほぼ全ての生産物は品種改良を経て、非常に偏った生物種で構成されている。

人間が利用可能と言われている作物は地球上に5000種類ほどあると言われる一方、

私たちの摂取するカロリーの75%は、たったの12種類の作物と5種の家畜から得られている。

飢餓の撲滅という社会的要請に応えることができた一方で、現代では別の課題が発生した。

肥満、低栄養、地球環境危機などである。

プラネタリーバウンダリー(地球の限界)では「すでに限界を超えている」と考えられる要素として、「窒素の過剰使用」「生物多様性の損失」、「二酸化炭素の排出」などがあるが、これらは全てフードシステム、食糧生産と関連があるものである。

これらの課題に対応する、フードシステムのパラダイムシフトが必要である。

その1つとなりうるのが「リジェネラティブ・オーガニック」であると考えられる。

肥料と農薬と耕起を抑え、イノベーションで課題を超えてゆく。

このために必要な視座は、異なるコンテクストにおけるリジェネラティブ(再生)。

壊れたものを再生する、といっても、何が壊れているかをまずは明らかにする必要がある。


トラクター等の機械により踏み固められた硬盤層の形成など物理的な問題。

肥料過多による化学的な問題。

カビや害虫対策の薬品散布による益虫の損失など生物・生態学的な問題。


耕起を繰り返すことで表土が侵食されるなど課題は様々だ。

これらに対して、病害虫、雑草、小規模圃場での経営を、不耕起で有機無農薬でどうするか、というのが直面する問題だ。

これらを乗り越えることが、現代の農業に必要なイノベーションである。


一方、消費者の立場としては、安く均一なものを求める偏った行動を改める必要がある。

現代の課題に取り組む食糧生産に対するリスペクトと、適正な価格での購買行動が必要だ。


感想

この講演を聞いて感じたのが、農業技術の変遷は社会進化の必然である、ということです。

農業に限らず、技術は社会的要請によって研究開発され、実装されていくもの。

1900年に求められる技術と、2020年に求められる技術が同じであるわけはありません。

飢餓の撲滅という課題を解決してゆく過程で、多くの生物種が絶滅に追い込まれ、窒素が過剰に使用され、土壌が破壊されてきたことを非難するつもりはありませんし、それができる権利などありません。

ただし、「これからのフードシステムがどのようにあるべきか」という議論には参加したいですし、実際の行動としても実践してゆきたいと考えています。

人生100年。

いつの時代でも、次の時代に向けて、変革の真っ最中です。

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