デービッド・アトキンソン氏の著作レビュー

(投稿日: 2020/11/10)

デービッド・アトキンソン氏は、元々は外資系証券銀行マン。バブル経済時の不良債権問題を指摘した伝説のアナリスト。

そして現在は、国宝や文化財の修復を手がける伝統工芸会社の社長、という異色のキャリアの人物です。

更に、裏千家で修行を積んでおられる茶人でもあります。この変人っぷり、たまらないですね笑

(最近、国会で名指しで野党に批判されていてびっくりしました。)

国運の分岐点」「新・生産性立国」「イギリス人アナリストだから分かった日本の弱みと強み

の三冊を読みました。


いずれも本のタイトルからお分かり頂ける通り、現代日本の憂国の士です。

アトキンソン氏の経済分析は客観的なデータに依拠して、シンプルで力強い結論を示されるので、分かりやすくて説得力があります。

彼からすると、我々日本人は物事を考えるときに「大事なことを決めるのに、主観的でフワフワした分析で、テキトーな結論を出す」から不思議だと述べています笑。

そういえば、先の戦争の敗因の分析も似たような結論でした。

人口減少はすべてを変える

国運の分岐点」「新・生産性立国」に共通した両著作のメインテーマ。

アトキンソン氏は、奇跡と言われる戦後の高度経済成長や他の追随を許さない技術立国といった風潮は「人口増加」によるもので説明される、と分析します。

その日本の人口が減少フェーズに入ったということは、日本のGDPを支える屋台骨が失われたつつあるということ。

人口減少社会で日本が豊かさを維持し、さらに豊かさを求めるならば「一人当たりのGDP」を高める以外に方法はない、と分析しています。

そのための手段として、最低賃金の引き上げや中小ゾンビ企業の淘汰が不可欠であると述べています。


非常に面白かったのが、世界の歴史上で人口減少下において生産性向上が実現できた例。

その例は、「ペストが発生した頃のヨーロッパの産業」にあるところです。

当時の主力産業は農業。

農業を支える小作人がペストに倒れ、労働力が大幅に減少。人口はどんどん減少し、需要そのものが減少。

需要がないので、値下げしても商品は売れず、デフレが発生。農地を持つ貴族は、土地があっても労働者がいないので収入は激減。

産業は人手がかかる穀物栽培から、比較的人手のかからない畜産にシフト。

数が少ない労働者を雇うために、賃金も飛躍的に上昇。

当時は高級品であった食肉や乳製品が、庶民でも普通に買えるようになり、現代に続く洋風の食文化が成立。


その分析力の鋭さ、説得力の高さ、話の面白さには心から感服します。

人生100年。

もはや、昭和・平成の生き方は今後の参考になりません。

全てを変える「人口減少社会」は、今後のキャリアを考える上でとても大切な視座だと思います。

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