淡交別冊「茶道具のつくろい」.レビュー

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(投稿: 2020/08/27、最終更新:2020/09/02)

道具が好きです。

中でも、使い込まれている道具には特に魅力を感じます。

日本には壊れた道具を漆で修理するという素晴らしい伝統的な文化が存在しており、中でも金継ぎは根強い人気があり、私も自宅で使っていて壊れてしまった食器の類を、漆かぶれと戦いながら修理して使っています。

酔って手を滑らせ、割れたのを自ら修理

そんな私の趣味をご存知のお茶の師匠から、素敵な本を頂戴しました。

amazonより

お茶の世界では、壊れてしまった器を逆に楽しむというとても素敵な発想があります。

茶道具の中でも名品と呼ばれるものに漆で修理したものがいくつも残されており、その素敵な世界を紹介している本です。

その中から衝撃を受けた「なおされた逸品」を以下にいくつか紹介します。

下は明治から昭和にかけて活躍した実業家で陶芸家の川喜田半泥子の作品「慾袋(よくぶくろ)」

石水美術館HPより引用

正面やや左横に大きな裂け目があり、質感が違うところが漆で直した跡です。

ただ直しただけでなく、直したところに青海波の蒔絵を施してあります。

続いてこちらは逸翁美術館蔵の茶碗、作品と合わせて銘が最高な茶碗。

阪急文化財団HPより

阪急グループの総帥、小林逸翁によりつけられた銘は「家光公」。

3代将軍とかけまして、割れた貴重な茶碗ととく。

そのこころは、「どちらも継ぐのが難しい」。

繕いの中でも、極めつけが下の茶入。

原型を留めないほどバラバラになったものをつなぎ合わせて作ったそうですが、つなぎ合わせた形跡が全くわかりません。

淡交2018年2月より引用

レントゲンによる調査で漆によって修復されたことが明らかになっているそうです。

表面の艶から察するに、上から釉薬を塗って焼き直したんだろうと思っていたら、全体に漆を塗っているそうで二度驚きました。

明治時代の漆芸家「柴田是真」が得意とした「変わり塗り」という漆以外の質感を漆で作る謎の技術を、この茶入では江戸時代に既にこのレベルでやっていたと言うことで、三度驚きました。

正気の沙汰とは思えない、超絶技巧。

あえて直した様を楽しむ見方もあれば、直したことがわからないレベルまで修復する技術もあり、奥の深い世界が広がっています。

人生100年。

自分で楽しむ程度の直しの技術を身につけて、お気に入りの道具と末長く付き合っていこうと思います。

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