リジェネラティブ農業の本
ずっと関心のある「リジェネラティブ農業」に関する本が出ていたので読んでみました。
邦題は「土を育てる」ですが、原題は、Dirt to Soil: One Family s Journey into Regenerative Agriculture。
直訳するなら「砂泥から土壌へ。ある家族のリジェネラティブ農業の記録」となります。
著者がリジェネラティブ農業の道を歩むようになったエピソードをベースに、栽培技術、自営農家の経営や相続、慣行農法の課題など幅広く紹介されていました。
amazonのレビューにも書きましたが「リジェネラティブ農業」が気になった時の入門書としてオススメできる本です。
6つの原則
リジェネラティブ農業の中身については、栽培技術やノウハウというより考え方、エッセンスが記載されていて、次の6つの原則が柱となります。
1.土をかき乱さない
2.土を覆う
3.多様性を高める
4.土の中に「生きた根」を持つ
5.動物を組み込む
6.背景の原則(気候風土や土地の歴史を考慮)
これら原則は、全てが豊かな土づくりのためのアクションであり、ここから邦題が付けられたのだと思います。
そしてそれは「フツーの農業」の視点で見ると「何言ってんだコイツ」って原則です。
そこを踏まえて本著では、あるメッセージが繰り返し発信されていました。
小さな変化を生み出したいなら、やり方を変えればいい。
大きな変化を生み出したいなら、見方を変えなければ。
『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン著
https://a.co/jfNpM5y
著者の言う通り、6つ原則の見方を変えて「自然界の環境」として見ると、どうでしょうか。
するとこれらの原則が「自然界ではごく当たり前」の原則であることに気付かされます。
ごく当たり前の生命のロジックを取り戻す事が、リジェネラティブ農業の重要な考え方と言えそうです。
リジェネラティブ農業の稼ぎ方
アメリカの農家は現状、補助金頼りの経営が多く、利益が出ないのが常態化しているそうです。
「今年トウモロコシで収益が出せた人は?」
手を挙げたのはひとり。
そう、たったひとり。
次に訊いたのは「来年もトウモロコシを育てる人は?」
今度は全員が手を挙げた。
『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン著
https://a.co/emzezdf
補助金頼りの農業を端的に表すエピソードです。
本著はビジネスとして農業を成功させるための手法の一つとしてもリジェネラティブ農業を推奨しており、「収穫数量ではなく、利益にこだわる」という事も重要視されていました。
著者の農園は多品目栽培の直販モデルで、畜産から養鶏、野菜や穀類から養蜂まで幅広く、何と17もの部門を持つ多角経営です。
更に驚くのが、この仕事を家族4人でやり遂げているという点。
フツーの観点からすると、とても手が足りないだろうと思っていましたが、ここも見方を変えないと分からないところです。
全体としては、「部門がたくさんあるからこんなに仕事が多い」と考えるよりも、むしろ
「自然にまかせてしまうので、やる必要がない仕事がこんなに多い」
という部分を考えてみてほしい。
たとえば、うちでは、肥料や農薬や殺菌剤を運んで撒く必要がない。
家畜にワクチンや殺虫剤噴霧を行う必要もない。
(中略)
家畜小屋から糞を運び出して、耕作地に撒く時間も必要ない。
いや、それを言うならそもそも家畜小屋を修理する時間だっていっさい必要ない。
まだまだほかにもあるけれど、イメージはだいたい伝わっただろうか。
『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン著
https://a.co/emzezdf
驚くばかりです。
最大の障壁は、人
自然を再生させ、地球環境を好転させる可能性があると言われるリジェネラティブ農業。
それについての関心は益々高くなり、何かしらの形でチャレンジしてみたいと思っています。
しかし、著者も指摘していますがリジェネラティブ農業を始めるにあたって最大のハードルとなるのが、同業他者です。
我が家のご近所さんは皆、慣行農法に勤しむ農家さん達。
草一本生えていない土が最も良しとされています。
そんな中で「土をかき乱さず、草を生やしっぱなしにして、何かを育てる」なんてあり得ない事です。
この農法にチャレンジする際は、畑の近くに「不耕起草本栽培・実験中」の看板でも立てなければならないでしょう。笑う
リジェネラティブ家庭菜園、いつの日かチャレンジしてみたいと思います。
大切なのは、一般的な農業モデルの落とし穴にはまらないこと。
生態系の再生を第一に考えること。
そして、収量ではなく、収益を見ることだ。
『土を育てる 自然をよみがえらせる土壌革命』ゲイブ・ブラウン著
https://a.co/dN3yEGO
コメント