「いけばな -知性で愛でる日本の美-」未生流笹岡家元 笹岡隆甫 著(新潮社.2012年)を読みました。
いけばなの美しさは単に感覚的なものではない、というところから本書は始まります。
著者は、黄金比などの多くの人が美しいと感じる数学的な比率が花を生ける基本型にあり、それを学ぶことが基礎になると述べています。
生け花といえば池坊、小原流、草月流が三大流派。他にも300以上の流派があるそうです。
基本形がアレンジしやすいことや、他流派との差別化が容易であることから多彩な流派が生まれたそうです。こうなると、茶道と同じく「華道を始めたい」と思った時に困るのです(苦笑)
(本著には記載がありませんが、茶人で有名な小堀遠州も華道にその流派を残していますが「遠州 華道」と検索すると、2つヒットし、どちらが本流なのかよく分かりません。色々あったみたいですね…)
茶道にも共通することだと思いますが「いけばなを学ぶと日本の文化がよく見える」ということを、多くの例を挙げて言及されていました。
日本の文化のバックグラウンドとして語られるのが陰陽五行思想で、「なぜ16弁の菊は皇室の紋章になったのか」に関する記述は、論理的に説明された陰陽五行って感じで面白かったです。
「5つの星(水星、金星、火星、木星、土星)に太陽と月の2つを加え、7つは天の数とする。」
「方位を北、北西、西、南西、南、南東、東、東北の8つに分け、中央の1点を加え9を地の数とする。」
「天の数7と地の数9を足した数の16は、天地を包括する最上位の数字である」
…ということだそう。
この理論は「生花早満奈美(いけばな はやまなび)」という江戸時代の書物に記載があるそうで、著者が「いけばなは論理」ということを裏付けるようです。
また、西洋との対比で「移ろいを動的に捉える」ことがいけばなの鑑賞法であるとも記載されていました。
お稽古では「花は、つぼみがちに生けよ」と習うそうです。
生け花は花器に生け上げたときが完成ではなく、蕾がほころび、咲いて、枯れてゆく。その命の移ろいも大事な鑑賞のポイントなのだそうです。
季節(時期)の移ろいは花で表現されているな、というのは素人でもわかりますが、そのような鑑賞のポイントがあったとは知りませんでした。
最後に、他の伝統芸能と同様に華道の世界は先細り真っ只中。流派を維持していくことが困難である現代ならではの危機感も示されていました。
少子高齢化の時代、伝統的な習い事の担い手は減る一方です。
これからどうなってゆくのか、気がかりでなりません。
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