茶道の稽古場では、3月頃になると「釣り釜」の稽古が行われます。
囲炉裏のように天井から鎖を吊るし、湯を沸かす釜をかける趣向です。
釣り釜は炭手前の際に釜と鎖の扱いが問題となります。
鎖の長さを調整する小上げと小下げ(3目)、大上げと大下げ。
釜を鎖から外してあれこれしているうちに、鎖目を何目動かしのか、分からなくなってしまいます。

更に釣り釜は、ご徳の上にドンと据え置かれている通常のお点前と異なり、上から鎖で釣り下げているだけですから、当然ユラユラ揺れます。
釜に柄杓を掛けたり、湯を汲んだりするたびに釜が揺れるので、その度に心も揺れます(笑)。
この辺りは、不安定に変化する環境において、常に環境変化に合わせて平常心を保つ稽古にもなります。
これも一つの茶禅一味。
そういえば、なぜこの時期に釣り釜をするのでしょうか。
御家元の一問一答(No.6)ではズバリ「東風(こち)が吹くから」との事。
窓を開けて春風を招き入れると、釜がわずかに揺れます。
目には見えない風を視覚的に捉える演出。
たまりません…!!!
そして稽古の途中でふと気がつきます。
茶室に出入りする時以外、戸は閉まったまま(夏のお点前では戸を開け放ちます)。
すると一体、春風はどこから入ってくるのでしょう…?
再び謎が現れました…。
分かったと思ったら、分からなくなる。
分からないながらにやっていると、ふと分かる時がある。
そしてまた、分からなくなる。
お茶の面白みは尽きるところがありません。


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