秋祭りとしめ縄
地域の神社の秋祭り。
この時期、お米作りの副産物である稲藁を使ってしめ縄を新調します。
稲の種子はお米となり、茎は縄となるわけです。こうした自然と文化の共存を生き生きと感じられるのは田舎暮らしならでは。
今年はそのしめ縄作りの作業に一部だけ参加することが出来たので、記録しておきます。
材料集め
しめ縄作りの第一歩は材料集めから。
通常のコンバインによる稲刈りでは、稲穂からコメを脱穀したあと、副産物であるワラは細かく細断して排出します。

しめ縄に使う場合には、細断されていないそのままの藁が必要です。
よってしめ縄作りの第一歩は、米を作っている農家さんに藁を細断しないよう依頼して、田んぼから長い藁を回収するところから始まります。

こうして回収した稲わらは、雨の当たらない場所で乾燥させます。
(今年はこの工程には参加できませんでした)
わらすぐり
集めてきた藁は、茎に葉がついています。

しめ縄に必要なのは茎だけで、葉の部分は要りません。
藁の茎から葉を分離する作業を「わらすぐり」というそうです。
はじめて「わらすぐり」と聞いた時には何のことか分かりませんでしたが、調べたところどうやら「藁選り」と漢字で書くようです。
たくさんの中から特に優れたものを選びとることを示す言葉「えりすぐり」のような用法でしょうか。

一本一本の藁から手作業で葉を取っていきます。
気の遠くなるような作業です。
これで材料集めと下拵えが完了。
縄作り
こうして選りすぐったら、いよいよ縄を作ります。

地域の皆さんはこの作業のことを「縄をなう」「縄ない」と言いますが、縄を作る動詞「なう」という言葉があるようです。
しめ縄作りのど素人たる私が現場に入った頃にはすでに皆さん黙々としめ縄作りの真っ最中。

地域の皆さんは先生でなく実践者。
丁寧に教えてくれる人はいませんので、技術は自ら見聞きして学ぶしかありません。
家族みんなで参加したのですが、子供たちの辛抱が限界に達したので一緒にリタイア。
あとは手仕事が得意な妻に任せて子どもと共に戦線離脱。
残念ながら全く習熟する事ができませんでした。
またの機会に学ぼうと思います。
そういえば納屋に縄をなう器械がありましたので、これを機に引っ張り出して見ましたが全く動きませんでした。

広島県の佐藤農機製と書いてあります。
沿革から見るとおそらくこの会社の製品と思われます。
いつかレストアできるかな。
その他の工程
しめ縄つくりにはこの他にも沢山の工程があるように見えましたが、殆ど参加できなかったので今年の学びはここまで。

感想
10数人で作業していましたが、殆どが高齢者。
我が地域でのしめ縄作りは、まともに継承されなければあと10年以内に確実に消滅するでしょう。
人口減少社会の中、全てを残していく事は不可能。「何を残して、何を諦めるか。」という選択をしなければなりません。
個人的には、地域社会と風土、人と自然と渾然一体となるイベントにはとても大きな価値を感じるので、残していきたいと思っています。
地域の一員として、この課題に対して何か貢献できる事はないでしょうか。
折に触れ、考えてみたいと思います。
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