私は影響を受けやすいタチです。
特に本からは多くの影響を受け、本で学んだことを実践して生きてきました。
最近の本だと「ファクトフルネス」や「ライフシフト」、少し前だと「21世紀の資本」や「サピエンス全史」などは多大なる影響を受け、人生で困難に直面した時や迷いが生じた時のコンパスとして役立てています。
この本も、私の心の蔵書に仲間入りをしました。
この本のテーマ
「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」と日本語タイトルがついていますが、原題は「The Influet
ntial mind.」で、直訳すると「影響力」。
サブタイトルは「What the Brain Reveals about Our Power to Change Others」で直訳すると「私たちが他人に影響を与えるときの脳の働きを明らかにする」。
著者はターリ・シャーロット。認知神経学の研究者です。
つまりこの本のテーマは
人が影響を受けるのはどのような時か、そしてそれは何故か
という
シンプルだが人生において非常に重要な問いについて研究した内容をまとめた本です。
実生活に基づいた共感できるエピソードを盛り込みながら話が展開してゆくので、非常に読みやすく、心に残ります。
さすが、影響力の研究者が書いただけあります笑
この記事では、特に印象に残ったエピソードをいくつか記録しておこうと思います。
数々の実験で明らかになったのは、多くの人が「こうすれば他人の考えや行動を変えることができる」と信じている方法が、実は間違っていたという事実だ。
他人の考えを変えようとするときに犯しがちな誤りと、それが成功した場合の要因を明白にすることが、本書の目的である。
—『事実はなぜ人の意見を変えられないのか』ターリ・シャーロット, 上原直子著
https://a.co/gHNXSYu
同僚に仕事を手伝って欲しい、子供に部屋を片付けて欲しい、など人生において「人にこうして欲しい」と思う場面は那由多の数ほどありますが、その際に働きかける、お願いする方法の多くが実は間違っている、というのです。
それはなぜで、そしてどうすればよいのでしょうか。
データで人は変わらない
幾多の実験や観察から得たすべての数字が、まさか人間は事実や数字やデータに動かされないことを示しているなんて。
これは人間の頭が弱いからでもなければ、どうしようもなく頑固だからでもない。
私たちが影響を与えようとしている人の脳が何百万年も前からの産物であるのに対して、大量のデータ、分析ツール、高性能コンピュータが入手しやすくなったのは、ほんの2,30年前のことだからだ。
(中略)
情報や論理を優先したアプローチは、意欲、恐怖、希望、欲望など、私たち人間の中核にあるものを蔑ろにしている。
(中略)
確立された意見をもっている人は、時に頑として考えを譲らない。
たとえその意見をぐらつかせるような科学的証拠を突きつけられたとしても。
(中略)
新しいデータを提供すると、相手は自分の先入観を裏づける証拠なら即座に受け入れ、反対の証拠は冷ややかな目で評価する。
私たちはしょっちゅう相反する情報にさらされているため、この傾向は両極化の状況を生み出し、それは時を経て情報が増えるたびに広がっていく。
ターリ・シャーロット,上原直子. 事実はなぜ人の意見を変えられないのか (Japanese Edition) (第一章). Kindle 版.
今の時代は、真実を見極めるのが特に難しくなっています。
検索エンジンは検索履歴から「自分に都合がいい情報」ばかり選んで持ってきてくれるし、
「自分が調べて得られた結果が、自分が思っていた通りのこと」だったら気持ちがいいからです。
新型コロナの話題など、最たる例だと思います。
ワクチン接種推奨派と非推奨派の溝が一向に埋まらないのも、こうした要因があると思います。
推奨派には「コロナ感染の医学的、社会的リスクの大きさ」「ワクチン接種のベネフィット」が検索結果に出やすく、
非推奨派には、「ワクチン接種のデメリット」、「コロナ感染は恐るに足らない」「政府の陰謀」といった記事が検索結果に出やすくなっていて、お互いに自分に都合の良い情報だけを摂取し、反対側の記事はクリックすらしていないでしょう。笑
人をどう動かすのか
アメリカでは2013年ごろに幼児期に接種する3種混合ワクチン(MMRワクチン)を「接種すると自閉症になる」という科学的証拠の全くないデマが広がり、接種率が激減して麻疹の罹患率が1年で3倍に跳ね上がった時期があったそうです。
この公衆衛生状の課題に対し、政府や医療機関は当初「ワクチンを接種して自閉症になるというデータはない」と真正面から反論していたが、これには全く効果がなく、反ワクチン派はそっぽを向くか、違う反論データや別の専門家の意見を持ってきて再反論されるだけだったそうです。
研究チームは、MMRワクチンは自閉症を引き起こさないと説得する代わりに、同ワクチンが死に至る可能性のある病気を防ぐという事実を強調することにした。
(中略)
MMRワクチンの副作用への不安を払拭しようとするよりも、子供たちを重病から守るワクチンの力を強調する方が、予防接種に対する意識に変化が見られたのだ。
(中略)
変化をうまく導くには、共通の動機を見出せばいい。
次章で詳しく述べるように、共通の目的を見つけたら、次に必要なのはメッセージが伝わるよう感情に働きかけることだ。
ターリ・シャーロット,上原直子. 事実はなぜ人の意見を変えられないのか (Japanese Edition) (p.42). Kindle 版.
これは1つの方法ですが、反論してやり込めるのではなく、相手との共通点(この場合は子供の健康)を探し出し、そこにアプローチするのが有効な場合があるという実例です。
この本には他にも数々の研究成果や実例が紹介されており、自分の直感と真逆の事実と出会ったり、あっと驚くような問題解決の具体例も引用されており、読み応えは抜群。
全ページにハイライトしたくなるくらい、無駄なく素晴らしい本です。笑
人生100年。
2度3度と読み直して、人生の糧にしようと思います。
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