(投稿日: 2020/11/19)
周南市美術博物館のウィリアム・モリス展に行きました。

産業革命の後の時代を生きたイギリス人、ウィリアム・モリス。
産業革命は、社会を飛躍的に豊かにしました。
しかし、大量生産・大量消費や企画化・画一化の大きな流れの中で、何かが失われていくことを感じる人たちも少なからずいました。
モリスはその代表的な人物です。
彼の思想は日本では柳宗悦などに影響を与え、民藝運動へと発展し、現代に続いています。
私はこうした思想、運動の中で見出されてきた暮らしの道具や芸術作品が好きです。
そしてこの度、近所の美術館にモリスの作品たちがやってきたので、見に行ってきました。
モリスの故郷イギリスの美的感覚といえば、古いものを大切にするイメージがあります。

ロンドンの街並みに代表されるように、古い建物や街並みを保存していたり。
「英国家具」といえばアンティーク家具を指すように、ご家庭でも古い家具を何代も大事に受け継いでいたり。
また、自然の柄も有名です。
特にリバティー・ロンドンの花柄が有名ですが、植物柄(最近ではボタニカルと言い換える風潮がありますね)のデザインは、イギリスの代名詞的な柄となっているように思います。
モリス展に行って気がついたのですが、「アンティーク好き」「自然モチーフ好き」なイギリスの美的感覚のど真ん中にいるのがモリスでした。
モリスの作品
モリスの作品は壁紙や刺繍が特に有名で、自然モチーフのものが多いのです。
特別展で目を奪われたのはこちら。



これらは木版の壁紙です。そのいずれもが素敵。
壁紙の他に、刺繍の作品も展示されていました。
驚いたのが、刺繍は元々絵画や彫刻と同じ地位の芸術作品であったそうですが、この時代にカーペットなどの織物は蒸気機関で大量生産されるものとなってしまい、手刺繍産業は衰退期を迎えます。
そんな中でモリスは「手刺繍カーペットの製造」とは「布を製造」し「装飾する」高位の芸術形態と捉えて、制作に取り組んだそうです。
手刺繍の作品たちは、モリスによって美しさを再発見され、生き残ることができたのです。

モリスゆかりの作家たち
特別展ではモリスにゆかりのある人物に関する展示もありました。
まずは、モリスに大きな影響を与えた人物である、フィリップ・ウェッブ。
モリスの建築事務所の先輩にあたる人で、家具のデザインなどを手がけました。

フィリップ・ウェッブは、建築物の経年変化は付加価値であるとし、建築物などを修繕する際に、新品の状態に近づける修復でなく最小限の補修による現状維持を訴える運動を起こしたそうです。
イギリスの古式ゆかしい美しい建築物の数々は、こうした活動によって残されてきたのかもしれません。
ジョン・ヘンリー・ダールはモリスの一番弟子。
モリスの作風の正統進化を感じます。

チャールズ・フランシス・アンズリー・ヴォイジー作「小鳥と花」。
ただただ、かわいい。

モリスの娘、メイ・モリスの暖炉の衝立。
暖炉で衝立をどのように使うのかわかりませんが、インテリアとして堪らない魅力を感じます。

モリスの没後、思想を引き継いだのがウォルター・クレインです。
ウォルター・クレインの挿絵本の展示もありましたが、とても素敵でした。

特別展の最後のお楽しみ、ミュージアムショップ。

キッチンで使う用に手ぬぐいを買いました。
アーツアンドクラフツの作品も、民藝の作品も、暮らしの中で使ってこそ。
日常の中に美を取り込む。
日常の中に美を見つける。
こういう暮らしが好きなのです。
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