イヴォン・シュイナード氏は、アウトドアウェアなどを製造販売する企業「patagonia」の創業者。

大学生の時に著書「社員をサーフィンに連れて行こう」を読んで以来のファンです。
patagoniaは様々な点から通常の企業と一線を画しています。
世界中で事業展開する多国籍企業でありながら、株式公開していないこと。
政治的スタンスを隠さないどころか、明確な政治的メッセージを発信していること。
(ex.2020年アメリカ大統領選で、気候変動アンチ派を政界から追い出すために、服のタグの裏に「vote the ass hole out」とメッセージを入れています!)

売上の1%を草の根の環境保護団体に寄付していることなど、枚挙にいとまはありません。
その独特な経営手法はその筋では広く知られているところで、前掲の著書がビジネススクールのテキストに使われたり、最近ではマネジメントに関するベストセラーのビジネス書「ティール組織」でも先進的な組織の例として取り上げられています。

私が最初に就職した会社はpatagonia製品のリサイクルに関わる技術を持っていたので、何かしらの形で環境保護に関われるかな、と思っていたのですが、その部門は会社の中ではどちらかというと不採算事業。
その当時、会社の稼ぎ頭であった別の事業に配属されてしまい、その会社にいる目的を失って退職したという経緯がありまして、イヴォンやpatagoniaやその思想は、私の人生で結構重要な指針となっています。
patagonia 誕生の経緯もまたユニーク。
イヴォンは14歳からロッククライミングをはじめます。
patagoniaの事業も元々はロッククライミングで使う「ピトン」という岩に叩き込むクサビを作ってクライマー仲間に売る鍛冶製造からスタート。
その後ピトンが売れるにつれて、ピトン打ち込まれた岩がボロボロになってしまうのに衝撃を受けたイヴォン。
愛する自然を自らの手で破壊していたことに気づき、事業の主力品で業界トップシェアとなっていたピトン製造から自ら撤退。
岩を傷つけないクライミングギア「チョック」を開発し、岩を傷つけないクライミング技術「クリーン・クライミング」を提唱。
そしてクリーン・クライミングは瞬く間にクライミングの世界を席巻したのです。
このエピソードから分かるように、イヴォンは明確にビジョンありきで仕事をしています。
そして2019年にpatagoniaは企業スローガンを一新。
「故郷である地球を救うために、ビジネスを営む」
という、フツーの製造業ではちょっと考えられない、しかし強烈な危機意識を発するスローガンになりました。(詳細)
以前の記事でも取り上げた再生型農業を推進するために食品産業にも参入し、ビール、エナジーバー、缶詰など食品産業にも参入しています。
アボカドの事例研究にハマってからというものの、将来はregenerativeな国産アボカド生産ができたらいいなあ、でも儲からなさそうだからやっぱりイチジク農家になろうかなあ、なんて夢想していたのですが、地球環境のためにできるビジネスはregenerativeな農家になるだけでなく、regenerativeに生産されたものを加工販売(麦からビールを作る)ってのもアリですね。
人生100年。
1つの仕事を生涯にわたってやり続けることは、もはや困難となるだろうと考えています。
私自身どんな仕事がやりたいのか、世界はどのように変化していくのか。
楽しみです。
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