NHK-AM カルチャーラジオ「科学と人間」の講演で小松貴先生と出会いました。
彼の講演を聞いた人、または本を読んだ人ならば、誰しもがその只ならぬ雰囲気に気がつくことでしょう。
その雰囲気は本書の序文によく現れています。
(著者が)奇怪な生き物たちと出会い、戦い、そして愛し合った日々をつづった物語である。
私の書く文章にはたびたび「擬人化」という、本来研究者を名乗る者が使ってはならない表現技法が出てくる。
—『フィールドの生物学14 裏山の奇人 野にたゆたう博物学』小松 貴著
並並ならぬ気骨を感じさせるこんな記載も。
狩人蜂という名称自体も最近では「ハチは人じゃないから」というだけの理由で使用が避けられ、学術論文などではカタカナで「カリバチ」と表記するのが慣習になっているらしい。
私は、この記号みたいに無機質で風情のない呼び方が心からいけ好かない。
だから、「風情があってかっこいいから」というだけの理由で、本書では狩人蜂という呼び方に、徹底的にこだわっている。
—『フィールドの生物学14 裏山の奇人 野にたゆたう博物学』小松 貴著
こだわりを貫く姿勢にとても共感が持てます。
小松先生がすごいのは専門特化した昆虫学者ではなく、ナチュラリストな視座から外来種問題や絶滅危惧種の啓発活動も盛んに発信されているところです。
絶滅危惧種といえばイリオモテヤマネコ、コウノトリ、ヤンバルテナガコガネなどスターが思い起こされますが、彼は違います。
鉱山開発(石灰の鉱山)で絶滅の危機に瀕してゆく、コメ粒より小さいメクラチビゴミムシや、ディズニーランド世界的に有名なエンターテインメント施設の開発で、生息地である湿地を埋め立てられ絶滅寸前に追い込まれたツヤキベリアオゴミムシなど、名前も知らない小さな生き物たちです。
絶滅危惧種が絶滅危惧種になってしまった理由の最たるものは
生き物に対する一般の人々の無理解・無関心にある
と私は考えるからだ。
『絶滅危惧の地味な虫たち ──失われる自然を求めて (ちくま新書)』小松貴著
まさに南方熊楠の再来のような方です。
私もウナギの絶滅に歯止めをかけるべく、身近な人にその危機的状況を啓発をしていますが(絶滅する恐れが高いだけでなく、流通するウナギには違法採集されたものも数多く含まれる)たいてい変人扱いされて終わりです。
ある時など、職場のみんながウナギを食べに行くというので必死に止めましたが、多数決に敗れ私だけ店に入らなかったこともありました。
小松先生のことを知った時、僭越ながら「自分と同じような考えの人がいる!」と思って嬉しくなりました。
人生100年時代において、生物多様性は非常に重要な要素です。
これからも胸を張って自然環境保護活動に精を出そうと思います。
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